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2021年度入学式学長告辞
告辞
― Be multipotent ―

 入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。大学を代表し、心よりの歓迎を申し上げます。


 さて、生物学のことばでいいますと、皆さんはいま、マルチポテント(multipotent)、多様な可能性をもっています。マルチとは「多くの」、ポテントは「潜在能力」という意味です。赤ちゃんには、山中伸哉教授が開発したiPS細胞のP、すなわち、プルリポテント(pluripotent)、何にでもなりうる能力が潜在しています。かくいう私は70代でマルチでありませんが、なお複数の可能性が潜むオリゴポテント(oligopotent)と思っています。人生100年時代ですから、80代でも90代でも、せめてモノポテント(monopotent)、希わくばオリゴポテントでありたいものです。


 気は早いですが、皆さんには、ご卒業の頃もマルチポテントであってほしい。どの分野であれ、必ず、一人ひとりの個性にあった進路が、将来の皆さんを待っています。そのとき、選択肢、可能性は豊富にあるのが望ましいわけです。


 幸いなことに、私たちが学び、はたらく公立小松大学は、工学系、文系、医系の学部を擁する総合大学です。皆さんには、ひろい総合力、豊かな人間性と優れた専門性を培うとともに、ぜひ、他分野にも関心をもち、学部学科の垣根を超えた学びと交流を行なっていってほしいと思います。


 最後に、遺伝子の話を少ししたいと思います。私たちが両親からうけ継いだDNA本体は、一生を通じて、ほとんど変わることがありません。が、エピゲノム(epigenome)という、DNAを取り巻くタンパク質が酵素で修飾される仕組みによって、細胞核内のDNA―タンパク質複合体の構造や一部の遺伝子の発現が、徐々に変わってきます。最近に至り、後天的な学習や生活習慣が、エピゲノム調節に影響することもわかってきました。


 新入生の皆さんが、公立小松大学での日々の学びを通じ、皆さん自身のマルチポテンシャルと、遺伝子のはたらきをきたえられますよう念願し、告辞といたします。


令和三年四月二日
公立小松大学 学長 山本 博