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学長 2024年度入学式告辞
告辞

入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。保護者の皆さまにも、心からお祝いを申し上げます。ご来賓の皆さまには、日頃のご支援と、本日のご参列に感謝申し上げます。
この中には、能登半島地震被災地区からの入学者もおられ、3学部合わせますと、14名に上ります。被災されたことへの心よりのお見舞いを申し上げます。困難な状況下にあって、本学を選んでいただき、こうして入学して来られたことに、深甚の敬意と謝意を表する次第です。縁者や関係者を亡くされた人もおられるかもしれません。犠牲となられた方々に心よりの哀悼を捧げます。
さて、一般に、災害や事故、病気、愛する人との離別、差別、虐待、人間関係のトラブルといったcrisis、危機に遭遇しますと、多くの場合、私たちは落ち込みます。専門用語では、Post-Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害とよばれる状態です。しかし、そういう危機に向き合い、やがて乗り越える、それができるのも、私たち人間です。これは、大人にも子どもにも可能です。さらに、多少時間がかかりますが、危機前のレベル以上に、つよくもなりえます。心理学や医学の分野で、Post-Traumatic Growth、心的外傷後成長、とよぶ現象です。レジリエンス、すなわち回復する力、耐える力、再起する力、そういう資質が鍛えられる結果であります。
この先、皆さんを待つ長い人生航路を考えますと、まったく困難に出会わないよりは、さまざまな苦難に出会う可能性の方が高いでしょう。しかし、たとえ危機に遭遇し、一時的にTraumaを抱えても、その後、元に戻ったり、さらに成長しうる、そういうポテンシャルが誰にも備わっていることを知って、将来に臨んでほしいと思います。
関連して申し添えますと、公立小松大学の教育プログラムの中には、皆さん一人ひとりの思考力、すなわち学ぶ力とともに、人間力、すなわちさまざまな資質を、客観的にも評価し、見える化するプログラムがあります。思考力の指標は、批判的な思考力、協働的な思考力、創造的な思考力の三つ。人間力の指標も三つ、すなわち、リーダーシップ、コラボレーション、そして、レジリエンスです。思考力と人間力の測定は、在学中複数回なされますから、個々の能力の伸び具合もわかり、プライバシーを守りつつ、皆さんにフィードバックされます。
ところで、「友を選ばば書を読みて」ということばを、目にしたり聞いたりしたことがあろうかと思います。与謝野鉄幹作とされます。「友を選ばば」学生時代、ぜひ、いい友人をつくってください。「書を読みて」ぜひ、本も読んでほしいと思います。読書によって、私たちは、古今東西の賢人たちとも、友だちになれます。今日私は、座右の書の一冊をもってきました。この文庫本がそうです。哲学者、西田幾多郎の『善の研究』です。哲学も宗教も科学も芸術も包摂しています。プラトンもニュートンもゲーテもモーツァルトも出てきます。西田は、日本から一歩も出ませんでしたが、親友だった鈴木大拙が書いているように、「内に世界をもっていた人」でした。難解な部分もありますが、折にふれて開く、人生の旅路をともにしてきたような一冊です。
本学の附属図書館には、学長・副学長ほかの推薦図書も納められています。附属図書館ホームページで、推薦図書のリストと推薦理由も見ることができます。これらも参考に、ぜひいい本に出会ってほしいと思います。
最後に、新入生の皆さんの学業の成就と学生生活の充実を祈り、併せて、本日ご参集のご一同様のご健勝、弥栄、益々のご発展を祈念し、告辞といたします。


令和六年四月二日
公立小松大学 学長 山本 博