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理事長 2024年度入学式式辞
式辞

 「かように候者は、加賀国の住人、富樫の左衛門にて候」。これは、3日前の3月30日、能登半島地震復興を期しつつ、北陸新幹線の延伸をキャンペーンする東京浅草神社の神楽殿で小松の子供達が演じた「義太夫の勧進帳」である「旅姿小松緑弥栄」の冒頭のセリフですが、本学開学の際、私が発声させていただいた一節でもあります。
 本学は、開学からはや6年を閲しました。249名の新入生のみなさん、31名の大学院サステイナブル科学研究科に進学されたみなさん、入学・進学、誠におめでとうございます。公立小松大学は挙げてみなさんを歓迎します。本学は開学程ならずして、世界的なコロナ禍に巻き込まれ、インフルエンザが大流行し、水害の被災もあり、この1月1日には、能登半島地震により、能登をはじめ小松を含む県内各地、富山県、新潟県に大きな被害を出しました。みなさんの中にも、被害に遭われた方があると思いますし、親戚や知人を失われた方もあるかもしれません。心からお見舞いとお悔やみを申し上げ、早期復興のために力を尽くしたいと存じます。
 この6年の間、本学は、一歩一歩足許を踏み固めるようにして教育研究に励み、大学院を創設し、これまでに689名の学部卒業生と、18名の修士課程修了者を送り出しました。この4月には、大学院に博士課程が発足しました。かくして、私どもは今日を迎えているのでありますが、みなさんは、それぞれの人生目的の達成のため、勉学と課外活動に打ち込み、あわせて、本学発展の途を教職員や市民県民の方々とともに歩んで頂ければ、幸いこれに過ぎるものはありません。
 本学が、今日を迎えるまでには、ここに御臨席の宮橋勝栄市長さんはじめ小松市当局、新田寛之議長さん達市議会議員の皆様、林勇二郎先生をはじめとする関連大学・学界の方々、勝木保夫先生をはじめとした本学を支える会の皆様には格段の御高配を賜りました。さらに広く小松市民、石川県民や全国の本学に関係される皆様、関係諸官庁の方々からも力強い御支援を頂きました。心から御礼申し上げます。本当に、ありがとうございます。
 本日、ここに集った入学生・進学生は、地元の人もあれば、遠方から来られた人もあります。人はみな自分の故郷を持っています。みなさんは、故郷を大切にして、愛してください。そして、他の人の故郷を愛する気持ちをよく汲み取ってください。それぞれの人の大切な故郷、土地、地域、国家を相互に尊重することが、世界の平和につながっていくものと確認します。そして、みなさん、学生生活を送るこの小松を愛してください。
 小松の名前は、異説もありますが、平安時代に花山法皇がこの地に来られて、梯川の近辺に小さい松を植えられ、それが園の小松原と言われて、そこから小松という地名が起こったとも言われています。花山天皇は、当時政界の有力者で権力の完全掌握を狙った藤原兼家と息子の道兼の陰謀により、愛する女性を亡くした心の隙を突かれて天皇在位中に宮中から半ば強制的に出家させられた、と歴史は語っています。今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の中で、その場面は印象的でしたが、実際、花山天皇が本郷奏太さんが演じたような天皇であったか、兼家や道兼の映像と実態の乖離はどのようなものか、詳細は無論わかりません。「大鏡」という史書にあることを現代の脚本家大石静さんが脚色したものであり、我々は大河ドラマをドラマとして大いに楽しんでいます。同時に、歴史上の出来事について、実態を知ることは、極めて困難というより、不可能とも思えますが、できれば原典に当たるなどによって、真実に迫る努力をすることが求められます。もちろん、現在の事象でも実態の把握に努めることが極めて大切であります。我々は、偽りの発信はせず、また、それに惑わされないようなしっかりした見識を備えることが重要であります。
 みなさん、江戸時代に町の人々が小松学問所を創り上げた小松、学問の伝統が豊かに薫るこの小松で、どうか実りある学生生活を送って下さい。我々はそのために全力を尽くすことをお約束して、歓迎の式辞と致します。


令和六年四月二日
公立大学法人公立小松大学
理事長 石田寛人