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令和5年度 理事長 学位記授与式式辞
式辞

 本日、公立小松大学が送り出す231名の学部卒業生のみなさんと、18名の修士修了生のみなさんに、心からなる感謝とお祝いの言葉を申し上げます。みなさん、おめでとう。そして本当にありがとう。私は心の底からそう申し上げます。
 思えば、学部卒業生のみなさんは、設立後2年の本学に学ぶことを志されました。修士修了生のみなさんは、本学大学院の一期生であります。設立間もない大学、大学院に飛び込み、揺籃期の学園と歩みをともにされて、学びの道を進まれた、チャレンジ精神溢れるみなさんに対して、私ども教職員はその熱い気持ちに応えるべく、懸命に教育研究の日々を送ってきました。
 皆さんの在学中は、コロナ禍が猛威を振るい、それが完全に終息しないうちにインフルエンザが大流行し、さらに今年、能登半島地震が穏やかなるべき元日に大きな惨禍をもたらしました。早い復興を願うばかりです。災害では、一昨年夏の当地小松の水害も忘れられません。自然災害やパンデミックは、我々を襲い続けます。そんな状況において、日々の研鑚が実って、みなさんが、今日の日を迎えられたのに、深甚なる敬意を表します。
 思えば、我々を生んだ母なる地球は、他面我々に厳しい試練を与え続けてきました。そんな地球上で、いろいろな生き物が生まれては消え、生まれては消えしていく中で、我々の祖先は命を全うし、遺伝子を繋いで、我々は今ここに存在するのであります。まさに我が校歌に歌う奇跡と言えましょう。138億年前のビッグバン以来のこの宇宙の片隅にあって、46億年前に誕生した地球の長さに比べれば、長くて100年前後の寿命しかない人間は、はかない存在であります。しかし、その小さな我々ホモサピエンスは、頭脳の発達に恵まれ、かくして社会を形成し、文明を築き、国家を創り上げて、大学を組織し、今、学位記授与式を挙行しているのであります。私は、現在こそが、人類が営々として歩んできた道筋の最高の到達点であると考えます。そんな我々は、今、AIという最先端技術と向かい合っています。
 昨年、私は、本学将棋サークルの部長さんとともに、藤井聡太竜王名人の将棋を見に行き、彼が古今に絶する将棋の天才、将棋星人であることに目を見開きました。しかし、その竜王名人よりも今のAIの方が着手を誤らないとされています。4年半前、私は、AIの父と言われるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授と接する機会に恵まれましたが、今、ヒントン教授は、AIが、豊かな未来をもたらす可能性を示唆するとともに、これが人類の脅威となる可能性について警告しています。AI悪用の報道が新聞やネットをにぎわす昨今、我々はAIの世界をしっかり生きていかなければなりません。そこで大切なことは、人類の歴史と学術の蓄積を踏まえ、合理性ある世界観を身に着けて、一時の激流に巻き込まれない判断を堅持することと確信します。かくして、我々は、最先端の科学技術成果を人生に取り入れ、人間社会を更に一歩進めることができると思います。
 私は、理事長という仕事柄、みなさんに授業で接することはありませんでしたが、みなさんの勉学に打ち込む姿やサークル活動を懸命に見守ってきました。そして日々元気づけられてきました。感謝しかありません。
 もちろん、私の感謝の気持ちはみなさんに対してだけに留まりません。小松市民の皆様、宮橋市長さんをはじめとする小松市当局や新田議長さん達市議会議員各位、周辺地域や石川県下の皆様、国の関係府省庁の方々、連携する諸大学や学界、協力企業と関係団体の皆様、大学の審議会、委員会委員や各種顧問の皆様。本当に多くの方々に御尽力の結果として、本学は、開学6年を閲して、第1回の中期計画期間を終了し、3度目の卒業生と初めての修士を送り出し、大学院にサステイナブル研究科博士課程を創設し得たのであります。本当にありがとうございます。幾重にも御礼申し上げます。
 最後に、各学部卒業生、修士課程修了生のみなさんに、「はなむけ」の言葉を申し上げます。それは「公立小松大学の第3期卒業生として、あるいは最初の修士として誇りと自信をもって力強く生きてほしい」ということであります。みなさんの後には多くの後輩が続くでありましょう。大勢の人の先を行けば、風圧にさらされます。みなさんは、そのような風圧に屈することなく、力強く進んで頂きたいと念願します。若いみなさんに「幸多かれ」と念じつつ、私の式辞を締めくくらせて頂きます。


令和六年三月二十三日
公立大学法人公立小松大学
理事長 石田 寛人