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令和7年度 理事長 学位記授与式式辞
式辞

 「かように候者は、加賀国の住人、富樫の左衛門にて候」と私が声を発して、公立小松大学の開学を宣言し、校歌作詩者のなかにし礼先生に見事にフォローして頂いた平成三十年四月から八年。ここに、五度目の学位記授与式を挙行して、二百四十六名の学部卒業生の皆さんと、二十二名の修士修了生の皆さんを世に送り出すに当り、心から祝福と感謝の言葉を申し上げます。卒業生修了生の皆さん、おめでとう。そして本当にありがとう。
 開学してそれほど年数を経ていない本学の門を叩かれたチャレンジ精神溢れる皆さんに対して、その熱意に応えるべく、私ども教職員は、懸命に教育研究の日々を重ねて、今日を迎えました。皆さんの在学中、コロナが世を覆い、能登半島地震や大洪水などの大きな自然災害が発生しました。それへの対応と、被災からの復旧復興の努力の中で、皆さんは、懸命に学業に取り組んでこられました。それが、実って、今日の卒業と修了の日を迎えられたことに対して、皆さんと御家族の方々に深甚なる敬意と感謝を捧げるものであります。
  私の感謝は皆さんに対してのみに留まるものではありません。小松市民の皆様、宮橋市長さんをはじめとする小松市当局や南藤議長さん達市議会議員各位、周辺地域や石川県下の皆様、国の関係府省庁の方々、連携する諸大学や学界の先生方、協力会の各企業と関係団体の皆様、大学の審議会、委員会委員や顧問の皆様。これらの本当に多くの方々の御尽力の結果として、本学は、今日を迎えているのであります。ありがとうございます。幾重にも御礼申し上げます。
 私が、卒業生修了生を前に、理事長として学位記授与式で式辞を申し上げるのは、今回で最後でありますが、今、こうして皆さんの前に立つと、私が学位記を授与された六十二年前を思い出します。一九六四年三月、私は皆さんと同じように、授与式の会場にあって、大学総長の式辞を聴いておりました。私はその内容はそれほど記憶していませんでした。しかし、翌日の新聞記事を読んで驚きました。総長は「太った豚になるより、痩せたソクラテスになれ。」と語ったと書かれていたからであります。総長はそんなことは全く言っていませんでした。
 程なく真相が分かりました。事前にマスコミに渡した式辞にはその言葉があったのに、本番の式典では、それを読まなかったのです。この言葉の典拠は、ドイツの哲学者ニーチェのもののようですが、総長はなぜ読まなかったのか。その時は分かりませんでした。私はこの状況をいかに受止めるべきかを考えました。そして、時として、情報伝達は複雑であり、情報の受止めに難しいことがあるのを強く感じました。
 ものごとの真実に迫るには、現場に当たれ、あるいは原典を調べよと言われます。しかし、一般的にそれは容易ではなく、むしろ不可能に近いのが普通でありましょう。報道機関からネットからいろいろな情報が流れます。人工知能(AI)は、私達の求めに応じてどんどん新しい言説を作りますが、それらが正鵠を得ていないことがあるのは、日頃経験する通りです。報道機関、情報伝達機関は有用な情報を伝えるように全力を上げているはずです。しかし情報自体が、読まれることを欲します。今や我々が常時携帯せざるを得なくなったスマホは、世界像を映す貴重な鏡ですが、その鏡は自画像をも写し出しています。今社会に出る皆さんには、この世に溢れる情報に対して、その信頼度をしっかり確かめて行動して頂きたいと思います。
 このように情報が溢れ、激動する世界にあって、将来の安定な生活を見通しにくい現在を、辛い世の中とみる向きもありますが、私は現在が人類の到達した最高点でなければならないと思っています。我々の先人は、少しでも良い世の中をつくるべく懸命に努力してきたはずです。もし、現世が昔より良い世の中でないとすれば、それは先人、先祖に対して誠に申し訳ないことでありましょう。皆さんは、国際的な動きと社会経済の動向にしっかり対応しながらも、眼前の趨勢と一方的な情報に引きずられることなく、理性と感性のバランスをとって、この地域と我が国と世界をさらに一歩一歩前に進めて頂きたいと念願します。
 私は、理事長という職掌柄、皆さんに直接、授業で接することはなかったものの、皆さんの日々の営みを懸命に見守ってきました。そして活力を貰ってきました。感謝感謝です。そんな皆さんの前途に「幸多かれ」と願い、公立小松大学の更なる発展に大きな期待を寄せつつ、多くの関係の方々に重ねて感謝の言葉を捧げて、私の最後の式辞を締めくくらせて 頂きます。ありがとうございました。


令和八年三月二十三日
公立大学法人公立小松大学
理事長 石田 寛人