ホーム大学案内理事長、学長の新春ごあいさつ(令和5年1月1日)
理事長、学長の新春ごあいさつ(令和5年1月1日)
理事長
― 年頭の御挨拶 ―

公立小松大学 理事長 石田寛人 新年おめでとうございます。本年もどうかよろしくお願い申し上げます。
 コロナ感染が世界に広まってから3年になろうとしていますが、開学して2年足らずの揺籃期にコロナ禍に遭遇した本学は、教育と研究を進める上で、厳しい対応が迫られる日々を過ごしました。しかし、この間、学生、教職員一体となった努力と、小松市当局や多くの医療関係をはじめとする皆様の御支援により、一日一日と足許を踏み固めるようにしてこれを乗り越え、教育研究活動を継続発展させて、昨年3月、第一期の卒業生を送り出し、また、大学院修士課程サステイナブルシステム科学研究科を開設するなど、懸命の歩みを続けて参りました。お世話になった皆様方に厚くお礼申し上げます。
 Covid19は、これを完全に抑えきることが難しく、昨年末に至るまで、感染者、陽性者、濃厚接触者は増減を繰り返し、本学も、保健管理センターをはじめ関係者にとって、極めて忙しい日が続きました。この流行の当初は、これによって命を失う方々も多く、戦戦兢兢と過ごす日が続きましたが、最近は、コロナに対する距離感が何となく認識されて、いわゆるウィズコロナで社会が回る状況になりつつあるように見受けられます。しかし、何より大切な人命が失われる状況は今も続いており、また、コロナのために各般の社会経済文化活動を控えざるを得なかった事態も十分に回復してはおりません。亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、感染者の早期回復を願い、各方面の活動が十分に展開できる日が早く来るように、置かれた立場で懸命の努力を重ねたいと存じております。
 人類は、何度も大きなパンデミックに遭遇し、その都度それを克服してきました。メソポタミアでは麻疹の流行、古代エジプトでは天然痘の大流行などがあり、中世欧州では黒死病といわれたペストが猖獗を極め、20世紀のスペイン風邪が猛威を振るいました。これらによって、人類は多くの仲間を失いつつも、苦境を乗り切ってきました。21世紀に生きる我々は、これからも的確な対応によってコロナを乗り越え、さらに優れた人間活動を志さなければなりません。
 我々の先人が歩んできた道は、知識の拡大が進歩発展につながったすばらしいものだったでしょうが、また、苦難の道でもあったと思われます。そんな中を懸命に生きて、現在をもたらした先人に報いるために、今我々ができることは、未来の社会を人間にとってより好適なものにすることであると信じます。公立小松大学は、それに貢献できる人材をしっかり世に送り出したいと念じて、日夜、教育研究活動に励んでいます。どうか皆様、今年も、格段の御支援をよろしくお願い申し上げます。

学長
― 令和癸卯(みずのとう)年頭のごあいさつ ―

公立小松大学 学長 山本 博  新年あけましておめでとうございます。
 何か干支に因んだ話を、と考えましたとき、まず、浮かんだのは、モンゴルの草原を白ウサギが描かれたバスが走る光景でした。このバスの両側には、白ウサギと大黒様が描かれています。ご存知イナバの白ウサギとそれを助けた大国主命です。これからもわかりますように、このバスは日本に関係があります。
 絵を描いた人は春日行雄という日本人。画家ではありません。お医者さんです。春日先生は、モンゴルの孤児たちを守り育てるため、私財を投じて、ウランバートル郊外に「テムジンの友塾」という施設を建設されました。モンゴルでは、経済自由化に伴って貧富の格差がひろがり、失業や離婚がふえました。この結果、親や家を失ったこどもたちがふえました。春日先生は、そういう孤児たちを養い、勇気づけようと、「テムジン」というモンゴルの英雄チンギス・ハーンの幼名を冠した施設を建設したのです。春日先生は、つましく年金だけで暮らしておられ、頭の下がることに、年金の半分以上を「テムジンの友塾」の維持費に充てておられました。
 白ウサギと大黒様のバスは、こういう塾の孤児たちに、母国モンゴルのあちこちを見聞する旅をさせてあげようと、日本の篤志家たちによって導入されたものです。バスはトヨタ製。ヤマト運輸の労働組合が寄附しました。ガソリンは、東京府知事や司法大臣もつとめた出雲大社の第80代宮司千家尊福(せんげたかとみ)公の生誕150周年を記念し、ひろく内外の慈善事業を支援するために設けられた「大国主命みかえし基金」で購入されました。ちなみに、初春ですから、申し添えますと、千家尊福は、「年の始めの例(ためし)とて」とはじまり「松竹(まつたけ)たてて門(かど)ごとに」とつづく「一月一日」のうたの作詞者でもあります。
 こういう経緯から、春日先生がご自身で大黒様とウサギを描いたのです。春日先生が「テムジンの友塾」をはじめられたのは、停年退職された後のことです。春日先生のことや、ウサギの絵が描かれたバスがこどもたちを乗せてモンゴルの高原を走る情景を思い浮かべるとき、私は、一人の人間が志を立ててそれに取り組んだとき、如何に多くがなされうるかを教えられるように思います。
 つぎに、私自身のウサギ体験を語りたいと思います。私は、臨床医だった時期もあるのですが、それよりは長く、基礎医学徒として生きてきました。基礎医学の研究手法の要は、実験です。このため、ずいぶん実験動物を使いました。ラット、マウス、ハムスター、イヌ、ニワトリ、アフリカツメガエル、線虫、そしてウサギ。ウサギは、もっぱらポリクローナル抗体の作製に用いました。実験用のウサギは従順で、しずかに実験台に横たわります。声を出すこともなく、採血や抗原接種、最後には、全採血に応えてくれるのです。採血には耳の静脈を使います。キシレンでこすると、怒張して採血しやすくなる、それがウサギの特徴の一つでした。ウサギたちが尊い生命を医学研究に捧げてくれたお蔭で、人類は病気を克服し、長命を得ていることに思いを致し、感謝を捧げたいと思います。
 2023年が、このホームページをご覧いただくすべての人と、世界、地域にとって良い年となるよう祈念いたします。